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下村敦史 / 闇に香る嘘 (講談社/ハードカバー)

第60回乱歩賞受賞作品。
69歳の老人、しかも全盲という異例の主人公設定。
主人公の失った視覚の描写がすんなり読み込めて
非常に安定して、自然に主人公の世界に入っていけます。
中国残留孤児としてお互い時期を別々に帰国した兄弟。
主人公が自らの所為で失った家族。
その家族を取り戻す為に兄との久々の再会が、主人公に
大きな疑惑を生む事になる。「果たしてこの兄は、中国で
生き別れた本当の兄なのか?」

残留孤児問題が絡む以上、重たい社会派作品なのかと思えば
本質はもっと身近な「家族」をテーマにし、視覚を失った主人公が
その心までを閉ざしてしまった事で生んだ様々なものを取り戻す
再生の物語として非常に素晴らしく、何度も目頭が潤んでしまいます。

随所に散りばめられた伏線が大小織り交ぜて、後半に
はまっていく展開。そしてネガポジのように一気に
その世界が反転していく展開は、圧巻的に面白い。
そして何より、登場人物に悪人がいないのも素敵です。
映像化される気配がしますw。

作家ご本人が過去乱歩賞の最終選考に5度まで残るも
受賞を逃していた時のような心理が作品に活かされたような気すらします。
きっかけ一つで視覚のない世界でも色を感じされるようになった主人公。
何度も候補作になりながらも、溜め込んだエネルギーを今作で昇華させた作者。
どちらも素晴らしい。いい作品を読んだアノ高揚感は気持ちいいです。

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by neon_books | 2014-10-05 23:11 | 国内作家さ~

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