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麻見和史 / 虚空の糸 警視庁捜査一課十一係 (講談社/ノベルス)

好調シリーズ第4作。小柄ながらも強い想いを持った
女性刑事「如月塔子」。派手さはないながらもその
上司でもありパートナーでもある「鷹野」との
コンビネーションも板に付き安定したシリーズとして
読める作品。

今作の事件の口火をきる殺人事件はマンモス団地で
発見された男の刺殺遺体。被害者自身がナイフに
ナイフを持たせ稚拙に自殺偽装された遺体だった。
いつもより派手さの内一見単純な殺人事件は
思わぬ方向へと発展。犯人自らの警察への脅迫に
よりその明らかになる真意。都民千三百万人を
1日1人づつ無差別に殺人をするという...予告。
その身代金は2億円。
絞り込みのないような事件は塔子の所属する
十一係と特殊班の合同捜査によって解決に
乗り込む。

なかなかに大きな展開に高揚感は自然と
高まりますが、捜査そのものは苦戦一方で
犯人側からの指示、そしてそこで犯した
小さなミスによってその全ての真相が
明かされる結末には...少しだけ肩透かし感が
否めない。面白いんですが...圧倒的なスーパー刑事が
登場しない今シリーズとしては仕方ない...かな?
広げようによってはもっと緊迫感とスケールの
大きい作品になったような気もするだけに...。
小振りの作品の印象になってしまうのが惜しい。

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by neon_books | 2013-04-29 04:47 | 国内作家あ~

花村萬月 / 希望 (仮) (角川書店/ハードカバー)

成績優秀な高校3年生「幸司」は東大受験当日に
まさかのあり得ない失態を犯し...高い自意識が故
実家にも帰れずにそのまま成り行きで三谷暮らしを
始める。その失態のきっかけとなった手配師から
新たな仕事を得る事になったのだが、その仕事先は
福井県にある原子力発電所。原発の点検作業員という
仕事だった...。

今作の初出が2010年なので東日本大震災以前からの
連載作品でありながら、以前から作者のウチにあった
原子力発電、この国の電力利権、エネルギー利権などと
震災が起した事が重なった事で、今作が読者に与える
印象は善くも悪くも「原発」寄りになってしまうところを
あくまでも主人公「幸司」の飄々と淡々とした、羨ましくも
ある転落した青春を綴る事で、あくまでも小説として
最後まで読ませる力量が素晴らしい。

その後「幸司」は原発作業員の任期を終え、沖縄での
ダム工事作業員として飯場に入る。そこで様々な
人間と出会い成長していく様になんだか...異常に
感情移入させられてしまいます。小説の時代設定も
絶妙ですね。このクニがまだギリギリで持っていた
おおらかさが救いになっています。ここ数年の中で
「西方之魂 ウエスト サイド ソウル」と並ぶ名作。
だから、萬月作品を追う事をやめられないッス。

必要以上に悲観もしないし、楽観もしていない。
現在のこのクニ、そして未来に希望はあるのか。
(仮)が取れるかどうかは今を生きて、暮らす
自分が瞬時に考えた行動を起こす事なのかも...ですね。

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by neon_books | 2013-04-26 16:49 | 国内作家は~

首藤瓜於 / 脳男 (講談社/文庫)

オリジナルが2000年の発行だから...12年を
経て何故映画化されるのか分からないですが、
気になり出したら読みたくなり、再読。
当然再読も12年振りなので、詳細殆ど覚えておらず
ほぼ初読くらい新鮮でしたw。

連続爆破事件の共犯者として逮捕された
「鈴木一郎」なる人物。取り調べ、裁判を経て
彼は精神鑑定を受けるために医療センターに
収容され、そこで精神科医師「真梨子」と出会う。
「鈴木一郎」の特異性の高い症状と彼自身が
何者なのかを探る為に「真梨子」自身が
中盤は探偵役として奔走する。
平行して「鈴木」を逮捕した刑事「茶屋」も
違和感を覚えたまま独自捜査によりその違和感
の正体を「真梨子」が突き止めた真相と
照らし合わせた時に再度、爆発事件が起る。

文句なしのジェットコースター展開で後半は
謎の男「鈴木」が超絶な探偵役としてストーリーに
絡んできて、そこからの非人間的な能力に
ワクワクします。彼が何故そのような能力を持ち、
行動できる事になった経緯も生い立ちから、下調べと
独自の展開が説得力を持ち、こちら側に強い存在感と
感情移入できる人物として書かれています。

ラストのミステリ的な展開も満場一致だったと言われる
乱歩賞受賞も大袈裟ではない出来です。やはり面白い!

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*蛇足ですがどうやら映画は...要所要所のディティールや
設定など異なっているみたいですね。小説をベースにした
別モノ...くらいのスタンスで観たほうが良さそうです。
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by neon_books | 2013-04-24 18:12 | 国内作家さ~

綾辻行人 / 人形館の殺人 (講談社/文庫)

館シリーズ4作目。実はここからが自分にとっては
シリーズ初読です。前評判から「人形~」は...
とか、異色とか、変化球とかの情報は得てたのですが...
本当に...変化球ですね。暴投と言ってもいいような気もします。
でも、暴投のクソボールなのに...何故かバットが出てしまう。
前3作があったからこそ出来たこの作品のプロットは
たった一回のみ使える必殺の一球。

彫刻家だった父親がかつて住んでいた京都の屋敷。そこは
マネキンが何体もオブジェの様に飾られた不思議な人形の館だった。
主人公「飛龍想一」が移り住んでから不思議で生臭い事件が
連続して起る。
単純には犯人探しがメインですが、読むにつれ今作が
醸し出す危うい雰囲気と隠し持った刃に少しづつ
引き込まれていくのは...なんだかんだ言って...面白い作品
なのではないでしょうか?

上手く言えませんが...「館シリーズ」や「新本格」、
そして「ミステリ」「推理小説」...と言ったものの枠から
一度逸脱する事の魅力。そうする事でその枠を今後も
続ける事に対して得るもの...そういった事を感じながら
書かれた作品なのかも...と思うと目くじら立てる作品な
ハズがないんですけどねw。これ以降の他の綾辻作品を
順番に読んでいくのが楽しみです。

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by neon_books | 2013-04-19 23:11 | 国内作家あ~

福田和代 / 碧空のカノン 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート (光文社/単行本)

航空自衛隊の音楽隊を部隊にした音楽と日常のミステリと
そして少しの恋愛がブレンドされた割とライトな方の(?)
福田作品。このテイストは...きっと有川浩作品のファン
にはストライクな気がします。

主人公の「佳音」は入隊中堅のアルトサックス奏者。
彼女の日常はまるで絵に書いたようなドジっ娘で
鈍感で、トラブルを引き寄せる不運体質。そんな
彼女達に、失われたスコアが突如匿名で返却されたり、
学生時代の謎、中学校の吹奏楽部から楽器のパーツが
連続盗難される事件、イラクから届いたメッセージなき
絵はがきの真意...など様々な謎を、朗らかに解決して
いく連作スタイル。

想像よりは演奏シーンや演奏者としての熱い想いや
音楽を小説で描写するパートは少なかったものの、
しっかりと取材に基づいた福田作品ならではの
東日本大震災後の彼等の心情、活動の描写は
ほんの少しだけ...なのにリアルに胸に響きます。

もし...続編があるなら...「佳音」の演奏者としての
夢である大きい舞台での活躍や、より深い音楽小説を
期待してしまいます。

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by neon_books | 2013-04-18 22:50 | 国内作家は~

清涼院流水 / コズミック 世紀末探偵神話 (講談社/ノベルス)

再読。たしか以前(97年頃?)に読んだ時は途中で
挫折した記憶なので十数年振りのリベンジとなりましたw。
やはり色んな意味での寄書というか、つきヌケ感は
凄いです。今作が世に出てから、様々な形を変えた
フォロワーや脈流が現在のある部分では、スタンダードに
なってるんですから...。人間や世間の適応力って凄いw。

1200の密室で1200人が殺される...という異例中の異例の
連続殺人。イギリスで106年振りに蘇った切り裂きジャック...。
JDCなる探偵団体、そして特殊能力を持って事件を
解決する探偵...もうカオスな内容をどのように読む側の
人間をねじ伏せるんだろう...という興味のみで約700Pを
読まされてしまうのはやはり凄い。
結果...どう思うかは...それぞれですね。一部では
「壁本」(壁に投げつけるくらい....な本)として
名高いですねw。

今の自分のテンションならこれ以降の作品も
イケそうな気もするので...過去のリベンジを
してみようと思います。

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by neon_books | 2013-04-17 22:21 | 国内作家さ~

西村健 / 地の底のヤマ (講談社/ハードカバー)

863P...二段組。...長かった。九州大牟田の
三池炭坑を舞台にしたある警察官の半生と
その街そのものを描いた大作。
ここまでの自分の中の西村作品を大きく
覆す作品で読み応えは勿論、ズシリとした
楔をうつ作品。

昭和35年から40年の時間を順を追って
丁寧に、主人公「鉄男」の警察官としての人生、
そして人間としての葛藤、苦悩、闇、喜び全てを
内包した人生そのものを矛盾も含んだまま、
丁寧に描いています。さらには炭坑街としての
大牟田という街の背景にある過去から現在が
大きなウネリを持って、書かれているところが
今作の重みになっているのかもしれません。

「鉄男」の刑事として関わった事件、そして
その父にして街の伝説的な刑事の死の真相。
ミステリとしても読ませる、有無を言わさぬ
力強さに溢れてます。登場人物も膨大な数ですが
ほとんど混乱せずに読ませる、配置と力量が光ります。
特に、「オッチャン」と「ヒカッしゃん」なる脇役は
西村氏ならではのキャラクターで涙を誘う。

ただ、主人公「鉄男」という人間の持つ弱さや矛盾。
逆に強さや正義感。その両方があまりに混沌と人間臭く
小説の主人公としては感情移入しくい面もあるかもです。
が....自分は充分にこの作品世界に浸りました。

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by neon_books | 2013-04-16 00:13 | 国内作家な~

白石かおる / 誰もが僕に「探偵」をやらせたがる (角川書店/単行本)

前作が09年。流石に前作の内容はほとんど覚えていないので
今作中でその際の心境などを綴られても...正直、微妙。
これは他の読者の多くも思った事みたいですw。
巻き込まれ系の脱力風キャラの会社員「白石かおる」が
本人の意思とは関係なく事件を解決、真相を解く
探偵役として描かれる短編集。

この語り口や描写や人物同士の会話...基本的に
トーンは低く、シニカル(って言うんですか?)で
個人的には...合わないタイプ。鼻に付く...って
いうんでしょうか?鼻に付く割に頭に入ってこなくって
結構読むのに苦労しました。こういうトーンが
小洒落ててカッコいいならば...自分は無理っすw。合わない。
自分が上司だったら絶対に対応に困るタイプですね、
この主人公w。

4編の短編で構成された今作。主人公の注意深い
洞察力、注意力、想像力そして思考により
真相を見抜くミステリ的な面白さは、何となくですが
西澤保彦、石持浅海...作品のファンにはハマる...
かもですね。

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by neon_books | 2013-04-15 15:44 | 国内作家さ~

アダム・ファウアー / 心理学的にありえない 下 (文藝春秋/ハードカバー)

と言う事で下巻。上巻でのややスローな展開が
嘘のように...この下巻では一気に加速したストーリーが
展開され、少しだけ「え!?ちょ、ちょっと!」感がw。

組織に利用された2人の子供と2人の大人の能力者
による凄絶な脱出劇で幕を閉じる第2部。時系列的に
これ以降の4人が上巻の冒頭で書かれており、序盤の
謎のアイテムだった「ネックレス」の真相が明かされ、
更にこの4人の邂逅が意味する事の大きな意味が
書かれています。
その後ジェットコースター展開の第3部に突入すると
一気に爆発したスピードでアクションパートが展開。

謎の教団「グノーシス」の指導者「ヴァレンティヌス」の
目論み。そしてその正体に立ち向かう4人。
それぞれの能力同士が対立、反発、受け入れ、増幅しながらの
バトルとそれをサポートする普通の天才「スティーヴィー」
があまりにカッコいい。ホームレスだったのにw。
教団が起そうとした大掛かりなテロ、そして強烈な
存在感を放つ「ヴァレンティヌス」の正体など...は
後半の展開が早過ぎた事と、主要人物がかなり呆気なく
舞台から姿を消してしまった事で、印象としては大味な
大作映画を観たような印象になってしまいました...が
結構集中して読んでた自分がいました。面白かったス。

登場人物も違うし、ストーリーも異なるのに「数学的〜」
と比べてしまって、残念な印象が残ってしまうのは...
やはりこの邦題の所為なのでは?

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by neon_books | 2013-04-14 15:41 | 海外作家

アダム・ファウアー / 心理学的にありえない 上 (文藝春秋/ハードカバー)

「数学的に~」を読んだのがどの位前だったか...覚えては
いないですが当時の自分にしては珍しく翻訳作品を
面白く読んだ記憶が残っています。その作者の2作目の
今作...流石にこの邦題はw。

所謂「共感覚」を持った能力者とその能力を利用しようと
する側のサスペンスストーリー...ですかね。割とスローな
ペースで展開される上巻では2人の子供「イライジャ」と
「ウィンター」の幼少期を描きつつ、彼等を組織に導く事に
なる「ラズロ」と「ダリアン」とのストーリー。
さらに強力な能力を持つ少女「ジル」をも巻き込み、
ニコラ・テスラが残したと言われる彼のノートまでも
登場し、組織の目論み、策略を秘めつつ膨らんでいきます。

前作では作者の専門でもある統計学と
アクションとサスペンスが上手く融合した傑作でしたが、
善くも悪くも今回はハリウッド映画やアメコミを
思わせるような大袈裟な展開なんですね。
下巻では出揃った(?)カードが
スピーディーに展開される事を...期待。

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by neon_books | 2013-04-13 21:51 | 海外作家

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